2004.04.14 Wednesday
梨木香歩『西の魔女が死んだ』
西の魔女が死んだ
梨木 香歩
中学校へ行けないまいは、祖母のもとで「魔女修行」をすることになった。
それは、何でも自分で決めるということ…。
児童文学者協会新人賞などを受賞した、生きる力を与えてくれる癒しの児童文学。
「西の魔女」というタイトルから、
勝手に「オズ」のような魔法が出てくるFTかと思い込み、
今の今まで読まず嫌いしていた私ってお馬鹿さん。読み終わって、深く深く反省。
(ここで言う「魔女」とは、なるべく文明に頼らず、生活の中に自然を取り入れ、
心穏やかに暮らすナチュラルライフ(カントリーライフ)を送っている。
ほんのちょっぴり奇蹟が使えるみたいだけど)
「西の魔女が死んだ」と聞かされた「まい」が衝撃を受けるシーンから物語は始まる。
そして想いは2年前、西の魔女(祖母)と暮らした宝物のような日々へと飛ぶ。
そう、この物語は「まい」の回想によって綴られる心温まる癒しの物語であり、
自然と、おばあちゃんの温かい眼差しに包まれ成長していく
「まい」を描いた少女の自立の物語でもあり、
決してなくしてはいけないモノ、見失っていけないモノについて、
祖母から孫へと着実に受け継がれていくさまを、きっちり描いた物語でもある。
とにかく!西の魔女であるおばあちゃんが魅力溢れる人物なのだ(*^^*)。
祖母と孫という近しい関係なのに、ベタベタ決して過保護にはせず
「魔女修行」という形で、あたかも人生の先生と生徒であるかのように、
近づきすぎない距離を保ちながら、
野苺のジャムの作り方、洗濯機なしで洗濯する方法など教えてくれる。
作品の中で描かれるカントリーライフのなんと素敵で魅力的なことか!!
そして描写される自然のなんと美しく眩しいことか!!
日々の忙しない生活の中で、どうしても見失いがちな自然の美しさ豊かさを、
読み手であるこちらにまで、おばあちゃんに改めて教えてもらったような気がする。
そして何と言っても、追いつめられた「まい」を何も言わず黙ったまま受け止め、
肯定するおばあちゃの姿に、じんと胸が熱くなった。
「大きくなったら、私にもできるだろうか。救えるだろうか…」
ついつい考えさせられてしまった。
規則正しい「魔女修行」を送るうちに、
いつしか「まい」は生きていくリズムを取り戻し、回復していく。
そして居心地が良かったおばあちゃんの家を出て、自分の人生へと歩みだしていく。
おばあちゃんとの後味の悪い別れがしこりとなって残っていたけれど、
そのしこりが、2年経って、最後の最後で溶けてゆく。
「西の魔女」からの最後の優しい魔法に、思わず涙ぐんでしまった泣き虫の私。
同時収録されている「渡りの一日」では、その後の「まい」の姿が描かれる。
魔女修行だってあいかわらず続けているようだし、
自分の目指す生き方も見つけたようだし。。。
うん。もう大丈夫♪
でも、もっともっとショウコにしろ「まい」にしろ、
彼女たちの物語を読みたいと願うのは
欲張りすぎなんだろうか(もっともっと続編を読ませろッ!!)。
しっかし、心に沁みてくる素敵な文章で溢れている作品なので
付箋を貼りながら読んでいたら、付箋だらけになっちゃった(苦笑)。
まるで、本から付箋が生えてるみたい(笑)。