2005.08.15 Monday
瀬尾まいこ『優しい音楽』
優しい音楽
受けとめきれない現実。止まってしまった時間−。だけど少しだけ、がんばればいい。きっとまた、スタートできる。家族、恋人たちの温かなつながりが心にまっすぐ届いてしみわたる。希望に満ちた3編を収録。
「優しい音楽」「タイムラグ」「がらくた効果」の3編収録された作品集。
収録作品のいずれも、読んでいる間は、作品が醸し出す独特のユーモア、
温かな希望の光が射し込み、照らされるようすにすっかり心奪われてしまって、
「なんて心温まる優しい物語なんだー(3編とも似た読了感なのが残念だけど)」
素敵な物語を読んだなと胸を熱くしたけど、、、、、、あれれれれ?
読み終えてつらつら反芻して考えると、読んでいる間は気にならなかった
「現実感のなさ具合」が、とんでもない欠点のように思えてくるから不思議。
“現実を直視したくなくて、覚めない甘美な夢にまどろんでいる”みたいな
甘い甘〜い物語のように思えてしまって(苦笑)。
「そうあったらいいな」という祈りも込められているんでしょうが、
できるなら、いつまでも解けない物語の魔法をかけて欲しかったな>瀬尾さん。
以下、ネタばれを含む、作品ごとの感想です。反転してますが、ご用心。
>「優しい音楽」
タケルと千波はひょんなことから知り合った。でも、恋人同士になっても
決して家族には紹介してくれない。なぜ?その理由とは?
これ、そんなに絶対の絶対の内緒にしておかなくちゃいけないことだったのか?
疑問疑問。最初から正直に打ち明けても、何の問題もなかったと思うけど。
[タケルと千波の兄はよく似ていて、そのタケルと恋人同士になる…近親相姦ですか。うきゃあ。でもね、息子を亡くした傷を癒して貰おうと懸命に振舞うタケルくんがいじましかったですよ。「俺は俺、別人なんだ。ちゃんと俺という人間を見てくれ」そう主張することもできたのに。お人よしだよね。都合のいい人すぎ。でも、ハッピーエンドで良かった良かった。でも、本当のハッピーエンドなのかしら?(←本人同士の問題ですって^^;)]
>「タイムラグ」
不倫相手の平太が妻であるサツキさんと旅行の間、その子供佐菜ちゃんを
預かることになってしまった深雪。
いくつもの印象的なエピソードを積み重ね、二人の間に次第に芽生えていく
温かな感情をほっこりと描いた物語。
途中までは、かな〜り好きだった。
深雪が佐菜ちゃんに、逢ったことがないライバル、妻のサツキさんの存在を見て
ちょっとしたところに優越感を覚える箇所なんか、すっごく可愛いと思ったし。
けど、二人で平太のおじいさんちに行くところから、もうダメダメだった。
[サツキさんに障害があると判ったからって、なんで塩を送るような真似をするんだー。深雪ったら、お人よしすぎ!都合がいい女すぎ!つか、サツキさんが障害者だと設定した時点で反則だと思った。なんかいや〜な感じ。ずるいよね、これ。お人よしの深雪のこと、戦わずしてこの勝負から降りちゃいそうなんだもん。身を引くことなく頑張って不倫関係を続けてって欲しいぞ!…あれれ?(汗)しっかし、佐菜ちゃんと深雪を仲良しにしてどうするんだか。不倫相手と不倫相手の子供としてではなく、対等な人間同士として信頼関係を築いたってことなのかもしれないけど、佐菜ちゃんにとっての幸せは、平太と深雪が別れることなのに。深雪に幸せが、ちゃんと訪れますように。]
>「がらくた効果」
物好きな同居人はな子が拾ってきたのは、ホームレスの佐々木さんだった…。
マンネリ化し、立ち止まっていた俺とはな子の関係に、
不思議な佐々木さんの存在が優しい波紋となって変化をもたらしてくれる、、、。
[作中では「佐々木効果」って云ってるけど、題名が(無言)。…佐々木さんってがらくたですか(汗)。そういう意味じゃないのかもしれないけど、そう意味をとられても仕方がないよ、これじゃ。嗚呼。生活力ゼロの佐々木さん。「スタート!」と同居生活を飛び出したのはいいけど、野垂れ死にしてなければいいんだけど。←おい^^;]