2005.09.03 Saturday
山本幸久『はなうた日和』
はなうた日和 | |
山本 幸久 集英社 2005-07売り上げランキング : 36,279おすすめ平均 いい感じの連作短編集ですAmazonで詳しく見る by G-Tools |
東京・世田谷線沿線が舞台の、ささやかな変化と希望の物語。見知らぬ父親に会いにいく少年、東京を転々とするB級アイドル…。老若男女8人の悲喜こもごもを描いた連作集。『小説すばる』掲載に書き下ろしを加えて単行本化。
短編が8編収録された作品集。
ごくごく普通に生きている老若男女の十人十色な人生が
からっとした明るい色調で描かれていて、すっと物語に入っていけるのがいい。
ちょっと笑えてちょっとほろっとさせてちょっとほろ苦い物語の数々。
どんな人生も、晴れの日ばかりじゃない。
そんなくすんで冴えない人生に、希望の明るい陽射しが一筋差し込むようすを
優しい眼差しで描いているから、いつの間にか主人公と一緒に心が浮き立つよう。
明日は今日の繰り返しの1日ではなくて、きっと何か素敵なことが待っている。
そう信じさせてくれるような、心がぽっと温かくなる作品集です。
(ま、全部が全部、そんな心温まる物語ばかりではないんだけどね。
確かに「閣下のお出まし」「犬が笑う」「普通の名字」「コーヒーブレイク」に
ほろりん。ああ、いい話を読んだなとしみじみ思ったけれど、
「ハッピー・バースデイ」「五歳と十ヶ月」「意外な兄弟」は、
一見するとめでたしめでたしなんだけど…でも本当にそうかしら?
人生の悲哀も噛み締めつつ、物語のその後がすんごく気になって
ものすご〜く後を引いちゃうのだ。最後の「うぐいす」なんて!嗚呼。
明日は希望の1日なんかじゃないのね、ぽつりとこぼすサトヨさんの言葉に
「ああ(涙)」ちょびっと泣けてしまったわ/涙)
歌(鼻歌)に世田谷線に東京もなか、超絶戦士キャタストロフィンなどなど。
そんなキーワードで短編同士が微妙に繋がっているところもポイント高し。
物語世界がぐんと広がるのはもちろん、リンクを探しながらの読書は楽しい♪
ぜひ地図を用意して「この辺りのお話かな?」想像しながら再読してみたい。
もしかして『笑う招き猫』ともリンクしている?確かめてみたいな!