幻夜
東野 圭吾
’95年、西宮。未曾有の大地震の朝、男と女は出会った。
美しく冷徹なヒロインと、彼女の意のままに動く男。女の過去に疑念を持つ刑事。
彼女は一体誰なのだ…。『週刊プレイボーイ』連載に加筆して単行本化。 [警告]
ネタばらししてる、、、かも。
未読の方、新鮮な思いで『幻夜』を読みたい方は、読まないでね。
面白かった!!この作品を読む人間全てを、ぐいぐい作品世界へと惹きこむ、
とてつもない吸引力を持った作品だとは思う。
だけど。どうしても先行する『白夜行』と比べてしまって。
『白夜行』の変奏曲(アレンジして書き直し)なのかと思いながら読んだけど、
やはり物語の根本に『白夜行』があって、その上に成立している物語でしょう。
だからやっぱり私は『幻夜』よりも、『白夜行』のに強く惹かれる。
『白夜行』では雪穂と亮司、この2人の悪行三昧の生き様に
反感を持ちながらも圧倒された。
2人の、哀切と悲壮感がひしひしと漂う破滅的な愛の姿に、
そして最後に明かされる、人生を歪ませることになった秘密(
社会に対する復讐)に、
強く心を打たれて、痛みさえ感じたものだ。
『幻夜』で、美冬の共犯者となるのは雅也。
だけど、雪穂と亮司のような一心同体の関係ではなく、一見対等のようで、
雅也を単なる手駒としか見なしていないのはバレバレだ。
秘密という固い絆で繋がっているはずなのに、ねえ。
彼もまた、美冬に振り回された被害者にしか見えない。
美冬への愛ゆえに罪を重ね、それ故に孤立感に苛まれる雅也が、
大馬鹿というか哀れというか。。。
だからこの物語は、解くべき謎は美冬自身。
「彼女が、なぜそんな生き方をするのか、しなければならないのか」
それを行間から読み取らなくちゃいけなくて。
雅也の内面描写はあっても、美冬の内面描写はないんですもん。
だけど。この『幻夜』から窺いみる限りでは、
「過去をリセットしてまで、更なる上を目指す。
ホントにそこまでする必要があったのか?」
動機と、犯した罪の大きさとが、似つかわしくない感じがして、なんか違和感。
雪穂の“魔性の女っぷり”には、反感を覚えながらも、
共感&賞賛めいた想いさえ抱いたけれど、
今の時点では私、美冬のしたたかさには反感しか感じない。
はぁ。美冬の真意が知りたいな〜。
美冬の暗躍に関して「そんなに上手くいくんかい?」どっか冷めていた私(苦笑)。
どこまでが偶然で、どこまでが美冬が仕組んだモノだったのか。
つい雅也との出逢いさえ、偶然じゃなかったんでは?と勘ぐってしまう(苦笑)。
『殺人の門』にしろ『白夜行』にしろ、
舞台となる世相や時代の空気を上手に作品に取り込んで、
作品に広がりと深みを出すのに、成功している作品だと思う。
そして『幻夜』は。
…。
『白夜行』以降に起こったあの事件とあの出来事を、
作品に盛り込みがたいが為に書かれたのでは?
そう思っちゃったりして(汗)。
やっぱり続編の構想なんかもあるのかしらん?
凋落する美冬の姿を見てみたいけど、、、でも、一人勝ちしそうだなあ(苦笑)。