2006.01.30 Monday
小池昌代『黒雲の下で卵をあたためる』
黒雲の下で卵をあたためる | |
小池 昌代 岩波書店 2005-11-26 売り上げランキング : Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ギュンター・グラスの詩に出てきた風景について綴った表題作など、詩人の豊かな感性がひしひしと感じられて心地よい、しずかな抒情にみちたエッセイを収める。『図書』連載「言葉が広げる風景」に書き下ろしを加え単行本化。
小説集『ルーガ』(感想)とほぼ同時期に発売された、こちらはエッセイ集。
いんや。エッセイというよりも随筆と、衿を正しながら呼びたくなるような作品です。
「図書」に連載された「言葉が広げる風景」の単行本化ゆえか、
詩人の持つ言葉へ寄せる深い思い入れが伝わってくるかのよう。
イマジネーション豊かに、そしてこの上なく的確で柔軟に、と
とても細やかに神経を使って言葉を選び、文章を綴っているのが、非常によく分ります。
と同時に、詩人ならでは(?)の本質まで見抜くような観察眼の鋭さが光る作品や、
ノンフィクションかと思って読み進めると小説のような作品もあったりして、
持ち味である不可思議さも健在(笑)。
「えええ?」不穏な余韻を残したまま、ぶちりと終わってる作品もあって、
「次はどんなお話なのかしら?」読み進める楽しみがありました。