2006.02.28 Tuesday
松尾由美『いつもの道、ちがう角』
いつもの道、ちがう角 | |
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越してきて間もない街。初めて曲がった角の向こうで、いつしか「私」は奇妙にねじれた世界に足を踏み入れていた(「いつもの道、ちがう角」)。気に入ったものたちを、そのままの姿で永遠に保存したい―一人の男の歪んだ欲望が招いた悪夢(「琥珀のなかの虫」)。ある環境団体が行っていた恐るべき儀式とは?(「窪地公園で」)。読む者を夢幻世界に誘うダーク・ファンタジーの傑作7編。
「ブラックで奇妙な味わい」としかいいようのない作品が、7編収録された短編集。
どの作品も最後のオチのキレ味が抜群で、安穏とした日常から一気に、
非日常の世界へと突き落としてくれます。こ、怖い!背筋がぞわ〜。
さらに巧いのは、最悪の結果をやんわりと暗示するだけで、明言はしていないこと。
“読み手の想像に委ねる物語”は、作者の怠慢とか単なる逃げとしか映らないものなのに、
この作品集に関しては別。それゆえにうっとりするほど魅惑的になってます。
作家松尾由美の小説の巧さが、遺憾なく発揮されている作品集です。ブラックだけど。