イトウの恋
「旅の時間は夢の時間」とあの女(ひと)は言った。人生はいつも誰にも不可思議なもの――。
ヴィクトリアントラベラーに恋した男の手記をめぐる、心暖まるラヴストーリー。『FUTON』に続く会心の書き下ろし第2弾!
この作品が“開国直後の変貌しつつある明治時代の日本を舞台に
『日本奥地紀行』を記した英国の女性旅行家イザベラ・バードと、
彼女の通訳だった伊藤亀吉をモデルにした小説”だと知ったのは読み終えた後。
ええ、私、何の予備知識も先入観もなしに読みました。面白かった〜(*^^*)。
時空を超えて、幾つもの恋の姿が浮かび上がる恋愛小説としても楽しめるし、
謎解きの物語としても楽しめるかと。
郷土史を研究する中学教師が、実家から後半部分が欠落した伊藤の手記を
偶然発見したことから、物語は始まる。
伊藤の子孫である女性劇画家シゲルに連絡を取り、二人で
行方不明の手記の行方と、伊藤亀吉の謎に満ちた人生を手繰り始める。
手記によって、明治初期と21世紀の現代が時空を超えて繋がる不思議。
手記の「恋」が投げ掛けた波紋が、じんわりと広がっていく。。。
明治初期に記された、年上の英国人I・Bへの恋心を痛切に綴る伊藤の手記と、
21世紀の現代で行方不明の手記の後半&伊藤の謎に満ちた人生を辿る
凸凹コンビの物語が交互に綴られていくんだけど、
お約束のように凸凹コンビの間にいつしか芽生えていく温かい感情の行方よりも
(ま、これも気にはなるんだけどね〜^^;)
なんと云っても恋愛モノの王道たる「イトウの恋」に打ちのめされちゃうのだ!
報われぬ恋に胸を焦がす、恋する事の喜びと苦悩。いや〜若いって素晴らしい!
個人的には、伊藤の手記によって凸凹コンビの片割れで、
イトウの曾孫たるシゲルの産みの母親に“その時何があったのか”
ちゃーんと説明がついてしまうのも、腑に落ちてすっきり。
p.270〜276、感極まって涙ぐみながら読んでました。
また手記から、開国直後の変貌しつつある日本の古い光景や
人々の様子が鮮やかに浮かび上がってくるようすも心奪われました。
明治と現代の日本。文体をも変え、緩急つけているところが心憎い。
ネットで感想を拾っていたらバイヤット『抱擁』との類似を挙げる方がいて。
残念ながら未読ですが、私はこの作品を読んで『赤い竪琴』を思い出したかな。
あそこまでストレートな恋愛小説じゃなく、クセモノな感じですが。
今ではすっかり失われてしまった古い日本への郷愁と恋の激情。
すっかり堪能しました〜♪中島さん、要チェック!!