都づくし旅物語―京都・大阪・神戸の旅
観光もせず、買い物もしない空白の旅。私は一冊の本を旅行鞄に入れて、かつて旅したことのある神戸へ出発した…。神戸・北野の噴水園、大阪・天満橋、京都・天竜寺…不思議な少年が誘う妖しのニッポン、懐しの三都。
この作品は、たらいまわし本のTB企画
「第11回『旅』の文学!」で、
KOROPPYさんがご紹介されていた本です。ようやく読みました〜♪
今から10年ちょっと前に実施されたJR西日本の“三都物語”キャンペーンの為に
執筆されたのかな?京都・大阪・神戸を舞台にした短編集です。
前半の「古都遊覧」は、実際に長野さんが三都を旅したその紀行文なのかと
思いながら読むと、その期待は嬉しい方面に裏切られます。
いつしか現実の街角から「これぞ、長野作品!」というキーワードを散りばめた
幻想的な異界の街並みに佇んでいて、幻惑されます。
気まぐれに不思議な空間へも誘ってくれる古都が持つ妖しい力のようなものが
ひしひしと感じられて、思わずうっとり(*^^*)。
後半の「三都逍遥」は少年たちが主人公で、旧仮名遣いとルビを多用した
独特の硬質で甘美な―いかにも「長野ワールド」を堪能できます。
京都・大阪・神戸が舞台なのに…ただ同じ名称が同じなだけで
まるっきり異なる(未来の)架空の街を舞台にしているかのよう。
「古都遊覧」と「三都逍遥」、同じ三都を描きながらも
がらりと印象が異なっていて、その異なっている様子がまた面白い〜♪
この本をガイドブックにして、どちらの三都へもぶらり旅してみたいです。
収録された作品が発表された時期は1990〜93年ごろ。
…。作中の神戸と反映されているのは、震災の前の街並みなのかあ、、、。
今、長野さんが新たな三都物語を執筆されたとしたら、どんな物語になるのか。
夢想によって甘美に紡ぎだされる新しい物語を、ぜひ読んでみたいなあ。
(え?自分で実際に旅して「私の三都物語」を綴れって?…ごもっとも)