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宇月原晴明『安徳天皇漂海記』

安徳天皇漂海記
安徳天皇漂海記宇月原 晴明
中央公論新社 2006-02
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おすすめ平均 star
starついに戦国時代以外も書いてくれました!
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ジパングの若き詩人王は詠い、巡遣使マルコ・ポーロは追う。神器に封じられた幼き帝を 壇ノ浦から鎌倉、元、滅びゆく南宋の地へ。海を越え、時を越えて紡がれる幻想の一大叙事詩。

第19回山本周五郎賞受賞作の本書。
結構前に購入していたものの、第135回直木賞候補作にノミネートされて、ようやく読めた!(嬉)
題名からして澁澤龍彦『高丘親王航海記』へのオマージュなのでしょうか。
素晴らしい!!!ただただそのひと言。
史実と虚構が見事に絡み合っていて、夢幻的な物語を紡ぎ出しています。
壮大で豪奢で幻想的な作品世界に酔いしれ、そして滅び行くものへの哀切で、
胸が締めつけられる作品です。嗚呼(涙)。

以下、自然にネタばれしてるかもしれませんので、
これから読まれる方はご注意を。
何がすごいって、壇ノ浦での平家滅亡から詩人将軍実朝の死、南宋滅亡、そして元寇まで、
時空を超えてずずずずずーーーーーーっと幼帝・安徳天皇で繋がってるってこと。
源氏(盛者)への尽きぬ恨み、まだ見ぬ波の彼方の都市への憧れを抱いて
神器に封じられて眠る少年天皇の設定が、すんごくいいのよね。鳥肌が立ちました。
(三種の神器で行方不明である草薙剣への言及。なるほど!こんな解釈が!)

第1部は側近の人物のモノローグによって綴られる鎌倉最後の将軍である実朝のエピソード。
実朝の死の裏には実はこんなことがと、史実の隙間を奇想で膨らませ魅せてくれて、
つい信じてしまいそうになります。すごく説得力があるんですよね。
今まで見知っていた実朝像とはまるで違う聡明な詩人将軍の姿を見て満足。
そしてその非業の死がこう繋がって、そうくるのか!で驚くのと同時に、
1章の最後のページで、胸の奥からこみ上げてくるものが。嗚呼。

1章を読んでいて最大の謎は、
「この語り手は誰で、なぜなんために誰に対して物語っているのか」
だったんですが、2章のマルコ・ポーロ篇で疑問氷解。
と同時に、1章がまるごと2章への伏線になっている構成の妙と、
その繋ぎ方の滑らかさに舌を巻きました。
2章の前半でメインとなるのは、波の彼方の都市へ向う途中で巡り合った
安徳天皇と同様に国なき少年皇帝との交感、そしてその最期。
すべてを奪い取られた少年皇帝同士、二人の姿が重なって見えてしまって、
ただただ切なくて悲しかったです。

読んでいるうちに次第に強くなってくるのは
「安徳天皇の魂は、どうしたら救われ、安らかになるのか?」という思い。
広げに広げた風呂敷を、いかに美しく畳むのかと、固唾を飲んで見守っていたんですが!
なるほど!そうそう、確かにこの作品は澁澤龍彦『高丘親王航海記』への
オマージュとしての一面も持ってましたもんね!
あの人物まで登場させてしまうなんて!と驚きながら、
幻想的で荘厳なクライマックスではただただ感動。
このクライマックスを見守るためにカーンの目、カーンの耳たる巡遣使マルコ・ポーロが
配されていたのね、と納得しました。
感動で胸が震えながらも、頭を過るのは「諸行無常、盛者必衰」の平家物語冒頭の言葉。
平家を倒した源氏も三代で滅び、源氏に代わった北条氏も、元寇を企て宋を滅ぼした元もまた…。
(そうそうマルコ・ポーロと言ったら「黄金の島ジパング伝説」なんですが、
上手に作品に取り込んでますな!解釈の仕方に、思わず脱帽です。)

今までに読んだ宇月原作品では『聚楽』が一番好きだったんですが、
史実の縛りがあるゆえか、クライマックスがイマイチ盛り上がらなくって
不完全燃焼でぶすぶすだったんですが、いやー。この作品は素晴らしいわ!
胸締めつける印象的なエピソードを積み重ねて、最後でどーん。お見事&感涙!
滅びゆくものへと投げかける作者の温かい眼差しの存在を感じて胸が熱くなり、
そして幻想的かつ壮大なスケールの伝奇ロマンに、ただ酔いしれました。
心の琴線までかき鳴らしてくれて、ものすご〜〜く素晴らしい作品ですっ!
現時点で、2006年マイ・ベスト1作品で決まり!
直木賞は難しいかもしれないけど(おい)、私は好き好き大好きです、この作品(はぁと)。



巻末に、これら「作品がなかったら、本作品が生まれえ」なかったと
4作品の題名が挙がっているんですが、、、1作品も読んでない(滝汗)。
まず先に『高丘親王航海記』から読もうと思います(汗)。
主要参考文献として巻末に紹介されていない作品からの影響も感じるので、
この1冊の本を契機にして、ぐんぐん読書が広がっていきそうな予感がします。
author: 七生子
ジャンル別(SF&ホラー&FT) | permalink | comments(4) | trackbacks(3)
 
 

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Comments:
この作品、いいですよねー。
私も大好きです。
ただ、あのピカピカ光るラストシーンが
ちょっと…(・∀・;)
『高丘親王航海記』の高丘親王とあまりに違ったので。
『高丘親王航海記』の方はもうちょっとわびさびの世界なんです。
すごい作品なので、七生子さんも是非、読んでみてくださいね♪
comment by: LIN | 2006/07/08 9:24 AM
LINさん、こんにちはー。
コメントありがとうございますー♪

もしかするとこの作品って、読者を選びません?
お互いに選ばれた幸せな読者で良かったですね!しみじみ。
もう!!!感極まって要所要所で泣きまくって読んでました(汗)。

あのラストシーンは…確かにちらり「え?笑うところ?」思ったことは
否めませんが、荘厳なラストということで(汗)。
ええ。私的にはするっとオッケーです。

「獏園」だけちょこっと読みましたが、
確かに『高丘親王航海記』とは趣きが違いますよね。
なーぜかまだ読めてないので、この夏の課題図書にするつもりです。
あと『うつろ舟』&カルビーノ『見えない都市』も(汗)。
comment by: 七生子 | 2006/07/10 2:26 AM
七生子さん、はじめまして。
【蒼のほとりで書に溺れ。】というブログをやっております、水無月・Rと申します。
やぎっちょさんのブログから、七生子さんのトラックバックをたどって、こちらにお邪魔させていただきました。

『安徳天皇漂海記』を読了し、これは三重マル作品だ〜!と盛り上がったはいいけれど、文章力の無さで、まっとうな感想が書けず、困っておりました。
いろいろなエピソードが絡まり合って、お互いを磨き上げながら、「貴種の怨念とその浄化」の物語の終末へと流れていく、その緻密さ、美しさ、切なさ…とても感動しました。

つたない文章ではありますが、トラックバックさせていただければ光栄です。よろしくお願いします。
comment by: 水無月・R | 2007/09/01 12:20 AM
>水無月・Rさん

はじめまして、こんにちは。
ご丁寧に挨拶いただいて、恐縮です。
こちらこそ、よろしくお願いしますー。

「作品を読んで感じた感動を、感じた通りに文章で
言い表せないもどかしさ」は、私も常日頃、痛感してますよ。
言葉と感動の間に距離があることがもどかしくて、
じれじれする時は、なるべく「上手く書こう」としないで「素直」に書くことを
心がけてます。ってアドバイスになってないですねー(汗)。
でも水無月・R さんの感想を拝見しましたが、
ちゃーんと伝わってきましたよ(*^^*)。

TBは事前申告なしに送っていただいて、結構ですので。
って、1か月以上も平気で放置しちゃうブログですみません(汗)。
comment by: 七生子@管理人 | 2007/09/02 10:53 AM
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安徳天皇漂海記 この本は 「まったり読書日記」のエビノートさんの感想 を参考に読みました。 ■やぎっちょ書評 今、改めてエビノートさんの感想を読んでから書いているのですが、かなり視点が違うことが明らかになりました。 その理由が読んでいる時にはわか
trackback by: "やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書!! | 2006/09/07 5:58 PM
今日ほど、自分の文才のなさを悔やんだことはありません。こんなにいい作品に出会えたのに、それを言葉にすることが出来ない。どう表現したらいいのか判らない。新聞の書評に『廃帝綺譚』があり、その中で前の作品として紹介されていたのが『安徳天皇漂海記』でした。「
trackback by: 蒼のほとりで書に溺れ。 | 2007/09/01 9:57 PM
慣れし故郷を放たれて夢に楽土求めたり「流浪の民」が頭を過ぎる。それは、夢と現が交じり合う、神代の時代から続く物語。ジパングの若き詩人王は詠い、巡遣使マルコ・ポーロは追う。神器に封じられた幼き帝を壇ノ浦から鎌倉、元、滅びゆく南宋の地へ。海を越え、時を越
trackback by: 読書とジャンプ | 2007/09/04 11:19 PM
 
 

どこまで行ったらお茶の時間

本を買うのも読むのも借りるのも大好き!
とにかく本が好きな私七生子が、読了本の感想など綴ってます。
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