<< 2009年5月、これだけ読んだ 【マンガ篇】*prev
単行本化されたんだ! >>*next
 

スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -
 
 

瀬川深『ミサキラヂオ』

415209012X ミサキラヂオ (想像力の文学)
瀬川 深
早川書房 2009-03

by G-Tools
半島の突端にあるこの港町には、ここ半世紀景気のいい話などなかった。だが、演劇人くずれの水産加工会社社長が、地元ラジオ局を作った時、何かが少し変わり始めた。土産物店主にして作家、観光市場販売員にしてDJ、実業家にして演歌作詞家、詩人の農業青年、天才音楽家の引きこもり女性、ヘビーリスナーの高校生―番組に触れた人々は、季節が移り変わる中、自分の生き方をゆっくりと見出してゆく。自分勝手な法則で番組と混沌とを流し出す奇妙なラジオ局のおかげで…。港町にある小さなラジオ局を舞台に、ひそやかに生きる人々が交差する、太宰治賞作家の意欲作。
 早川書房から創刊された<想像力の文学>の創刊ラインナップのうちの1冊。
 しかも作者である瀬川深さんは、第23回太宰治賞受賞作家でもある!(太宰治賞は現在、大好きな荒川洋治さんが選考委員を務めている。過去に金井美恵子さん、津村記久子さんも受賞されている注目の賞なのだ)
 読みたいと思いつつ、残念ながらまだ受賞作は読んでいないのだけど、受賞後初作品が早川書房のレーベルから出版されたということで、興味深く読んだ。

JUGEMテーマ:読書
 ミサキの水産加工会社社長がコミュニティFMを立ち上げたことから物語は幕を上げる。ミサキラヂオの番組に係るのはDJタキ、都落ちしてきた録音技師、喫茶店「アジール」の片隅で小説を書く土産物屋の店主、作詞家でもあるうさんくさい演歌好きの中年実業家、Uターンして家業を継いだ詩人である農業青年、引きこもって音楽のコラージュを作る長い髪の女、クラシック音楽番組担当の地元高校の音楽教師、ラジオネーム「第三の猫」、ロックやジャズのナヴィゲーターを務めるドクトル、同じ日に産まれた2人の少女ユミとユーミ、、、など、ひと癖もふた癖もある魅力的な人たち。  
 近未来である2050年の1年間を舞台に、ラヂオとミサキの住人たちの物語が綴られる。

 正直、私にとっては残念な作品だった。2050年の設定だけど、未来を描くというよりどうみても現在か現在よりちょっと昔が舞台のようで気になり、今一つ作品世界に耽溺できなかったので(現在が舞台でも、、、。必然性がさほど感じられなかった。リクエストでかかる曲がナツメロばかりだし、女子高生の話し方だって。ラヂオ聴くのがCDコンポっていうのも、うーんうーん)。時々思い出したように「今は2050年なんだからね!」念押しするかのような記述があるけれど(文学賞とか2030年代のバブルうんぬん、時間は循環しながら変化していく)、でも描かれるのは、思いきり今かちょっと以前の光景で。ここミサキの地ではそういうものなのだ、たかだか50年ぐらいじゃ、ささやかな人間の営みに劇的な変化は訪れないのだと、受け入れられればいいんでしょうが、どうしても、ねえ、、、(汗)。
 とはいうものの、ミサキラヂオを中心に集いゆるやかに繋がるミサキの住人たちが紡ぐそれぞれの物語、物語同士が共鳴するようす、狭いけれどその分親密でまったりしたコミュニティの雰囲気は好き。まるでミサキの住人になったかのような居心地の良さを味わえた。 
 作品では2050年の1年間が、季節と人々の移り変わりが描かれるのだけど、石を投げこんだ水面にさざなみが立ち、その波紋が巡り巡ってラジオの元により大きな波となって打ち寄せるような「秋」、それに、停滞してるかのようなミサキの暮らしにも変化が訪れるのだと気づかせてくれる「冬」のラストが心に沁みた。 
 “ラジオの音声が、場所・時間によってズレる”という気まぐれさ、遅れるあまり過去の声を受信してしまう設定が、あまり生かされていない気がしたが、「秋」そして「冬」を読んで納得。そのためだったのね!
 消えて無くなったはずの声や時と、再び巡り合える驚きと喜び。
 ときに過去から届く声の温かさ、力強さに励まされることもあるということ。
 ミサキラジオがミサキにあり、少なくない人間にとって大切な大事な場所になっていることが、嬉しく思えるお話だった。

 慣れるまで、やたらもったいぶった言い回しの文体が読みにくく感じたけど、絵にして映像化するとすんなり受け入れられるのかもしれない。登場人物ではシャイなワタナベユミちゃんがお気に入り♪
 作中流れる音楽の描写が印象に残ったので、太宰賞受賞作である『チューバはうたう』もぜひ読んでみたい。  

4480804110 チューバはうたう―mit Tuba
瀬川 深
筑摩書房 2008-03

by G-Tools
author: 七生子
ジャンル別(SF&ホラー&FT) | permalink | comments(0) | trackbacks(0)
 
 

スポンサーサイト

author: スポンサードリンク
- | permalink | - | -
 
 
Comments:
Leave a comment:






TrackBack URL:
http://naoko1999.jugem.cc/trackback/980
TrackBacks:
 
 

どこまで行ったらお茶の時間

本を買うのも読むのも借りるのも大好き!
とにかく本が好きな私七生子が、読了本の感想など綴ってます。
ドンナ・マサヨの悪魔 六本指のゴルトベルク 遠くの声に耳を澄ませて 恋細工 ジョーカー・ゲーム きりこについて 山魔の如き嗤うもの (ミステリー・リーグ)