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加門七海・福澤徹三・東雅夫編『てのひら怪談 己丑 ビーケーワン怪談大賞傑作選』

てのひら怪談 己丑―ビーケーワン怪談大賞傑作選 (ポプラ文庫)
てのひら怪談 己丑―ビーケーワン怪談大賞傑作選 (ポプラ文庫) 加門 七海 東 雅夫 福澤 徹三

ポプラ社 2009-06-10
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いまインターネットで話題騒然の「3分で読める800字の怪談」シリーズ第二弾。一度読んだら二度と忘れられない(!?)怖い話、不思議な話、奇妙な話、せつない話…三度の飯より怪談が大好物の書き手たちが腕を競った中から、特に評価の高かった作品ばかり全108編を一巻に厳選収録。
 『てのひら怪談2』と『てのひら怪談 百怪繚乱篇』所収の作品から108編を厳選し収録した傑作選集。108篇の奇妙で不思議な物語。切なくて、おぞましくて、ぞっとして、中にはくすり笑ってしまうものまで。800字以内と短いながらどの作品も、読者を独自の作中世界に引き込む吸引力のある物語ばかり。 
 『てのひら怪談 百怪繚乱篇』が既読で読み覚えのある作品も多かったけど、いやー。再読してもいいものはいい。「好き」と、印象深かった作品が収録されていると嬉しくなる。日常が非日常に切り替わる様を興味深く読んだ。 

 それにしても「てのひら怪談」を読んで掻き立てられるのが「怖い」という感情だけでは決してないこと、そして「怖い」という感情や「怪談」について改めて考えさせられるところが興味深い本だと思った。

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 今回読んで一番強烈だったのは、大河原ちさと「魅惑の芳香」。視覚と嗅覚、そればかりか味覚までも刺激してくれる脳髄痺れてクラクラしそうになる劇薬のような話。その匂いを嗅いでみたいようなみたくないような、、、危険だわ(笑)。

 その他、印象に残ったのは「シャボン玉」の童謡に物語を重ね合わせ、儚く淡い思いの行方を描いた岩里藁人「シャボン魂」。美しい物語だと思っていたのに、最後でぎょっ(汗)。怖ろしいというよりもユーモラスで微笑ましい暮木椎哉「阿吽の衝突」。最後まで読んで語り手の正体が分かり腑に落ちる一双「門番」、男女の業の深さ、そして艶めかしさが鮮烈な立花俯楽「鬼裂」、その光景を想像するだにシュールでシュールな武田若干「女」、こういう語り口もありなんだなとヘンに関心してしまったヒモロギヒロシ「火車とヤンキー」。壮絶な死闘のはずなのに、笑みがこぼれそうになるのは何故?(笑)

 ひたすら美しい。ただただ哀れで、だけど情景がくっきり目の前に浮かび、紡がれる物語の儚い美しさに耽溺してしまうのは君島慧是「泡影行燈」に田辺青蛙「姉やん」。『てのひら怪談 百怪繚乱篇』を読んだ時に一番「好き」と思ったのが、実はこの美しい姉への思慕がいつまでも余韻として甘やかに残る「姉やん」だった。

 某作品が思い浮かんだけど、えええ?そんなご無体な(汗)と思った梅原公彦「大好きな彼女と一心同体になる方法」、怖くないばかりか優しささえ感じられる怪異譚で、こんなことがあったらどんなにか救われるだろうなとつんとした石居椎「本日のみ限定品」に添田健一「食卓の光景」。逆に、これだけは勘弁!浅蜊の味噌汁飲む度にこの話を思い出してぞっとしそうな間倉巳堂「白髪汁」、同じく旅先で牡蠣が食べられなくなりそう、これまた視覚と嗅覚、味覚まで無駄に刺激してくれて涙目になりそうな有井聡「磯牡蠣」が食べ物系で強烈なお話だった。
 昔話的理不尽さと不条理感でたまらなくなる加楽幽明「禍犬様」、どこかにひっそりとそんな自販機がありそう、。ほのぼの我妻俊樹「かえる」に、どこの家にもこんな小人さんが居たりして、微笑ましい花房一景「小人」、十分このままでも不思議なお話だから、念押しするかのようにきっちりオチつけてくれなくてもいいのにと思ったのが、石居椎「受胎」に再生モスマン「亡妻」の2作品。

 収録作品の中で唯一「頑張れー!」応援したくなったのが行一震「もんがまえ」。怪談なのにいいのか?いいのよね、きっと(笑)。こんな風に、背中ぽんと押してくれるような怪異なら大歓迎かも〜♪

 ラストの一行ですとんと落とされる崩木十弐「お見合い」の不思議な味わいも好きだし、××と隙間を重ねてしまった発想の柔軟さにぽんと膝を打った宇藤蛍子「隙間」、そうと決まったわけではないのに、つい結びつけたくなる。団地独自のルールにぞわっとさせられる貝原「静かな団地」、小鉄な長男なら案外喜ぶかも、しっかしこの逆は……思い浮かべただけでむちゃくちゃシュールな吉野あや「父、悩む」、うわーん。これまたラストの一行に戦慄した仁木一青「七夕呪い合戦」、真実はいかに?淡い真白への思いは切なくて切ない堀井紗由美「マシロのいた夏」、一体その少女の正体とは?幼い日の郷愁を誘うクジラマク「土星の子供」。再生モスマン「○ちがい電話」は、これまた「怪談」なのにユーモラスなところがいいわあ。そっちに○ちがいなんかい!(笑)

 一行目から異質で異形の物語世界に引き込まれ、この世界に深く分け入って物語が読みたくなる秋山真琴「弔夜」、ふと迷い込んだ非日常的空間で二度と戻れないあの頃へ引き戻される切なくも美しい郷愁の物語、山村幽星「影を求めて」もよかった。しみじみ。年上の美しい女性への思慕は物語になるなあ。潮騒が聞こえてきそうな夢乃鳥子「海底の都」も、滅びの物語が重なって夢幻的で物哀しくも美しくて好き。

 しっかし。108篇の怪異譚の最後を締めくくる話が、こーんなにアホらしくてくすくす笑える話でいいんでしょうか(笑)。ヒモロギヒロシ「死霊の盆踊り」は、タイトルからして(私は残念ながら未見だけど/汗)先行する作品へのオマージュでもあるのかな?その光景を想像するだに、、、、、、噴き出してしまいそう(笑)。いやー。でも、コペルニクス的転回というか、こういう発想もありなのね!目ウロコしましたわ。

 ビーケーワン怪談大賞、そしててのひら怪談。これからも注目です。
author: 七生子
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