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大島真寿美『すりばちの底にあるというボタン』

4062153068 すりばちの底にあるというボタン
大島 真寿美
講談社 2009-02-18

by G-Tools
「すりばち団地」に住んでいる薫子と雪乃は、幼なじみ。その二人の前にあらわれた転校生の晴人。薫子と雪乃が知っていたのは「ボタンを押すと世界が沈んでしまう」ということ。しかし晴人が知っていたのは、「ボタンを押すと願いが叶う」ということ。どちらが真実?三人は、真実を探しもとめ動きだす。―団地を舞台に心の揺れ動きを丁寧に描き出した物語。

 ちょっと前に読んだ『三人姉妹』とは違って、こちらのお話は小学生の少女少年を主人公に据えた物語だった。“すりばち団地の敷地の底にあるというボタン”を押すとどうなるの?願い事が叶うの?それとも世界が沈んじゃうの?真相はいかに?すりばち団地の秘密を探るべく、団地を舞台にした三人の冒険は幕を上げる。
 
 
JUGEMテーマ:読書
 
 読んでまず感じたのは、大島さんらしく子ども目線で綴られるとてもチャーミングで可愛らしい物語だな、ということ。しかも、ただ可愛いだけ、甘いだけの話にしていないところがいい。 子どもが減り老人ばかりが残る団地の現状など現実のほろ苦さをさりげなく織り込んで、ファンタジックな部分と現実的な部分と、上手くバランスがとれた物語になっていると思う(物語の中で晴人の祖母浪子おばあさんが副会長している「すりばち団地を活性化させる会」略して「すり活」の活動も、実際にありえそう。実際、住民の高齢化と団地の空洞化が深刻な社会問題になっていて、活気を取り戻そうと団地の再生プロジェクトに乗り出しているところもあるのだとか)。

 登場する子ども達の設定にしても、感受性豊かで子どもに見られたくないないおませな薫子、産まれた時から薫子とずっと一緒、おっとりしていて現実的な雪乃、雪乃の二歳年上の兄で、かつていじめられっこだった邦彦、そして父親の失踪で、祖父母叔父が住むすりばち団地の住人になったばかりのちょっぴり内気、現実の友達はいないけどネットの中に友達がいる晴人など、今どきの子どもを生き生きと、上手く掬いあげて描いていて好印象だ。
 
 ボタンの、そしてすりばち団地の秘密を探るうちに次第に明らかになってくる事実に胸が熱くなる。
「千年たとうとふるえながら立ちつづけるその姿は、人々の目にやきついてはなれなかったといいます」
かつての邦彦を勇気づけ励まし、そして今、子ども達を怯えさせる世界をすくった少年のこと。なぜ「ボタンを押すと夢が叶う」という子ども達の伝承がそう変化したのか、せざるえなかったのか。いつの間にか無邪気に未来を信じ夢みることが出来なくなってしまった子ども達を思うと、胸が苦しくなる(ボタンに託したい夢。でも夢を語るのはみんな大人ばかりだし、しかも極めて現実的な夢……というよりも願望ばかりで、思わず苦笑。でも晴人の夢には思わず泣きそうに。最初は自覚さえなくぼんやりしていた夢が、クライマックスでは…!!そうだよね、まだまだ子どもなんだもん。ほろり)。



 さて。薫子たちはボタンを見つけられたのか。ボタンを押して夢が叶ったのか、それとも世界が沈んでしまったのか。それは読んでのお楽しみ♪
 ただ今までに私が読んでぱっと挙げることができる三編の団地小説が、どちらかというと希望があまり感じられない暗い印象の話ばかりだったので、この小説が読めて本当によかった。
 p.187からp.220まで、まさに大島真寿美の真骨頂って感じ。ぎゅぎゅぎゅっと抱きしめたいぐらい愛おしい。こんな風に言葉にしづらい想いをヘンに凝った言い回しでなく、素直にぴったり言い表せるなんてー。泣きたくなるぐらい、大好きだわ。
結局ボタンはあったのか、晴人は父親と再会できたのか、シュン叔父さんは消息不明になった息子と再会できたのかなど、もうちょっと知りたくてもやもやが残るけど、こんな風に余韻が残る終わり方もいい。薫子たちが成長したらやっぱり、すりばち団地から巣立っていく時が来るんだろうかとか……これはちょっと考え過ぎか/汗

 しばしの間、きらきらするような薫子たちの視線で世界を眺めることができて大満足!
 三人の少女少年の友情と成長の物語であるのと同時に、とびきり素敵な団地小説を堪能しました♪
author: 七生子
作家あ行(大島 真寿美) | permalink | comments(0) | trackbacks(0)
 
 

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