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西條奈加『恋細工』

恋細工
恋細工 西條 奈加

新潮社 2009-04
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おすすめ平均 star
starしんみり切ない

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一匹狼の職人・時蔵と女だてらに細工師を志す錺工房の娘・お凛。周りと打ち解けず、独り黙々と細工に打ち込む天才肌の時蔵に振り回されながらも、お凛は時蔵に惹かれていく。そして、反発し合っていた二人の心が銀細工を通じてかさなった時、天保の改革で贅沢品が禁止された江戸の町に活気を取り戻す、驚天動地の計画が動き始めた…。若い男女の哀しく切ない恋模様を描く本格時代小説。
 ああ、なんて切ない。 『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞の大賞を受賞してデヴューされた西條さんだけど、前作『烏金』と同様、江戸の市井に住む人たちの営みを描いた人情話だった。
 時代ものは苦手なはずなのに、畠中恵さんにしろ西條奈加さんにしろ、日本ファンタジーノベル大賞絡みの作家さんの作品なら、なぜかファンタジー要素がなくても美味しく読めてしまう私。
 この作品もお凜の想いの行方と、誰が錺職椋屋の跡目を継いで五代目春仙になるのかが気になって、作品世界に引き込まれて一気読みだった。
 JUGEMテーマ:読書
 
 倹約令を施行し、庶民の娯楽を厳しく制限した天保の改革を背景に、名前の通り凜とした一人の女性の恋と成長を描く。  

 時蔵が、協調性を欠き、ひたすら黙々と高度な技術を必要とする繊細な細工に打ち込む天才肌の職人という時点で、恋愛小説の王道だと思った。お凜が惚れない訳がない(笑)。最初時蔵のいうことやること全てに反発していたお凜が、時蔵の「平戸」という技を目にし、その技を盗み習得しよう奮闘する頃から、少しづつ向ける感情が変化していくのが興味深かった。 
 ひたすら己の細工のみ見つめる型破りの職人に、どんどん惹かれていくお凜。天保の改革が細工の材料にまで及び、締め付けが厳しくなっていくのに従って、思いは静かに深まっていく。

 このヘン、すごくよく分かる。だって、他人の痛みを思いやる心を欠き、己の価値観をよく理解してくれない幼馴染の伊左衛門や、時蔵が持つ技への嫉妬を、自身の技の向上へと向けることができず、ただ感情に任せて嫉妬するだけの子供じみた音助よりも、一人の男性としてもどこか影があって素敵だし、職人として尊敬できる時蔵を選ぶもの。
 時蔵がお凜のことをどう思っていたのか、その胸の内は詳細には語られないけれど、香炉のこと、柴太郎のこと、そして生駒屋依頼の神田祭の山車飾りづくりに際して人当たりが変化し柔らかくなったことから、読みとれると思う。
 こんな風に頑なだった時蔵を変えてしまうなんて。こんな風に互いに互いを認め合える二人って素敵だと思う。

( が。やっぱり、そうなってしまったのか。何度も「時蔵は職人じゃない」と言われるので、もしかしてもしかすると、、、、、、と思っていたけど、こんな悲しい別れが待っていたとは(涙)。そうなるしかないと分かっていても、ああ、やっぱり切ない。ただすべてが、女のお凜に5代目の跡目を継がせるためにあったのだとは思い至らなかったけれど。結果として跡目を継がず、時蔵の技法を外へ広めようと一人の職人として生きる道を選んだことに胸が熱くなり、変わらず抱きつづける時蔵への思いについ涙が。ぐすん。)

 時蔵の「平戸」という技法、秋田銀線細工のことみたい。秋田銀線細工を知らなかったのでググって画像を見つけ、その繊細で美しい細工に見入ってしまった。何でも現在の秋田銀線細工は、16世紀に長崎から入ってきた南蛮渡来の技法と古くから秋田にあった技法が融合して生み出されたものなのだとか。時代は違うけれど、史実がさりげなく織り込まれていたのね。 
 個人的ツボは、天保年間に刊行された土井利位『雪華図説』のことが盛り込まれていたこと。なるほど!そう繋げるか!
 江戸の庶民文化や世相風俗をさりげなく織り込みながら、当時の空気が伝わってくるかのようなところが読ませるなあ。

 読み終えてから表紙を見ると、、、ああ、こんな風だったのかと思った。ほろり。銀線細工のように繊細で美しい物語が読めて大満足!時代ものへの苦手意識が克服できた……かも♪
author: 七生子
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